医局を辞める

医局を辞めることへの不安と葛藤

医局を辞める不安と葛藤

「医局を辞めたい」日々多忙な業務をこなし疲弊すると、一度は頭をよぎったことのある言葉ではないでしょうか。

  • 医局を辞めようとしても強い引き止めに合うのでは?
  • 医局を辞めると嫌がらせを受ける?
  • 今の自分で医局を辞めてもやっていけるのだろうか?

いざ本気で退局を考えると、様々な不安から結局は今の生活を続けることの方が安心という気持ちに落ち着きます。でもそれは、退局後の情報が不足しているからかもしれません。

私自身は2022年に退局を経験していますが、医局を辞める前に抱えた不安の多くは杞憂でした。

この記事では医局を辞めた私の実体験も踏まえて医局を辞めることへの不安・葛藤その対処法を紹介します。

今の働き方に疑問を感じ、退局を検討している方の一助になれば幸いです。

医局を辞めると引き止められる?

医局を辞めるハードル上げている原因に教授との挨拶があります。私自身も転職活動の中でこの工程が最も緊張しました。

教授にとって医局員が抜けることはデメリットになるので、引き止められるケースが多いです。

引き止めにくい状況を事前に作っておく

予め準備しておくと、引き止められることなく、あるいは引き止められても断りやすい状況にもっていきやすいです。事前の準備として大切なことを挙げてみます。

  • 医局を辞める強い意志があることを伝える
  • 医局を辞める理由を丁寧に考えておく
  • 退局後の勤務先から内定を得ておく

あいまいな態度はすぐに教授に見透かされ、うまく言いくるめられてしまうでしょう。「医局を辞めるかどうか相談する」のではなく、医局を辞める意思が固いことをはっきりと伝えましょう

そのためには、自分の中で医局を辞める理由を整理しておくことも重要です。とくに原因が医局制度への不満であっても、それを口外してはいけません。「では希望にある関連病院への勤務にしてあげよう」と、医局側の改善で解決できる問題にすり替えられてしまいます。

退局を受け入れられやすい理由は、建前だけでも自分個人にあることを協調することで、引き止めの余地を小さくできます。

よくあるのは親の介護など家庭内の問題ですが、ウソをつくのはおすすめしません。この手のウソはばれます。私の場合は

  • 往診に興味がある
  • 将来開業を考えているので、クリニック勤務で学びたい

ということを伝えました。どちらも医局人事では経験しにくい業務です。

事前の準備のため引き止められなかった

私は上記のような対策が功を奏したのか、教授への挨拶のときにはほとんど引き止めらしい引き止めはありませんでした。「人が決めたことはなかなか変えられないからな」とうちの教授はかなり理解のある教授だったのだと、帰って退局を少し後悔するほどでした。

ただしこれは教授のキャラクターによるところがあるので、ケースバイケースでしょう。自分の医局の教授がどのような性格か把握しておく必要あります。

一番いいのは退局した医師から退局時の様子を聞くことです。私自身も少し前に退局を果たした同期がいたので、もちろん話を聞きました。

医局を辞めると嫌がらせを受ける?

医局を辞めると勤務病院で働けなくしてやるといった噂を耳にしますが、本当にあるのでしょうか。

医局の力は地方で強い

地方ですと医学部が一つ、圏内の病院はすべて関連連病院からの派遣で成り立っているという地域もあります。そのような場所では医局の力は確かに強いでしょう。

私も転職エージェントに登録するまでは、自分の科の働き口はすべて医局の息がかかっている病院だと思い込んでいました。実際に転職活動を始めると働き口は無数にあり、例え医局の力強くても、影響のない勤務先もあることが分かり安心しました。

医局にとっても嫌がらせはリスク

ひと昔前の隔絶された空間であれば、実際に医局による嫌がらせも横行していたのかもしれません。しかしSNSの発達した現代社会では、医局自身にもリスクを伴う行為です。

最近では従業員の内部告発がSNSに投稿されているケースも目にします。これが医局の嫌がらせを告発したものならどうでしょう。その医局に入る専攻医は激減するでしょう。

とはいえ医局との関係をこじらせ喧嘩別れのような退局をすれば、医局も強硬な手段を取りかねません。穏便な退局を成功させるために重要なことは、退局のタイミングです。

医局を辞めると孤独になる?

退局後はなかなか医局の先生たちと話しづらくなってしまうのが実情です。医局を辞めると普段の診療について相談できる相手がいなくなります。

緊急時の相談ができない

クリニックレベルでは、重症症例を見るという機会は多くありません。それでも緊急を要する病態であれば、その日のうちに紹介する必要も出てきます。

ご存知の通りこの判断がときに非常に悩ましく、相談したくなる案件です。上司を始め相談できる相手の存在は、医局にいた頃は当たり前でした。失ってみてそのありがたみを感じています。

学会で孤立

学会での醍醐味の一つが医局の関連病院の医師に会うことでもあります。コロナの影響もあって、退局後も学会は行けていません。学会でもとの医局の医師と会うと決まづくなりそうなので、今後も少し億劫になりそうです。

ただ地元の帰った大学の同級生や先輩との関係性は変わっていないので、意外と寂しくはないのかもしれません。

退局前に専門医は取得しておくべき?

私自身は専門医を取得してからの転職になるため、やはり専門医取得後の退局をおすすめします。専門医取得後の方が求人の幅が広がるからです。

ただし、専門医がないからといって求人が全くないわけではありません。それに勤務先によっては専門医取得を継続することも両立できる可能性があります。

このような求人はなかなか限られていることもあり、転職エージェントへの相談がおすすめです。

医師の知り合いから蔑まれるのでは?

一定の層は開業ではない退局に対して快く思っていません。私も一部の知り合いからダメだしされました。それでも自分が本当に友人と思っている医師からは、うらやましがられることはあっても貶めるような発言はありませんでした。

心無い言葉に惑わされないように、予め自身にとって何が一番大事なことなのか見つめ直して置くことが寛容です。

今までの取得した知識・技術が無駄になってしまうのでは?

最前線でも働ける知識、今まで培ってきた手術手技。努力して手に入れたものが必要なくなってしまうのは残念なことです。

医局を辞めたことでQOLは上がり、給料も増えました。それでもやりがいは低下したと言わざるを得ません。

転職の条件によっては、退局後も今までの経験が活かせる環境もあるでしょう。結局のところ、転職前に自分のやりたいことを整理しておく必要があります。

転職エージェントは相談に乗ってくれるが注意も必要

転職エージェントには、上記のような不安や葛藤に対しても親身に答えてくれる担当がいます。ただし中には強引に契約までもっていこうとする担当もいるので、注意が必要です。

基本的には商売ですから契約を成立させたいと思うことは当然のことと思います。「あたりの担当」を引くためにも転職エージェントは一つではなく複数登録しておくと、失敗しにくいです。

自分自身が最も大切に思うことを言葉にしてみよう

医局を辞めるというのは医師人生を左右する非常に重い決断です。その際出てきた不安や葛藤とは真摯に向き合いましょう

その過程において、自分自身が医師として働く上で何を重要視しているか。その答えを知るきっかけになるでしょう。

作業の果てに「自分は医局にいる方があっているかもしれない」という考えにたどり着いたとしても、今の働き方への満足度が上がります。

不安もあるけどそれでも医局を辞めたいと思うならば、転職へと歩みを進めましょう。